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犬歯の不正咬合の矯正治療を行った犬

歯科治療事例
岡山アニマルデンタルクリニック 院長 樽野 謙太

獣医師 樽野 謙太 / 岡山アニマルデンタルクリニック院長

資格 獣医師免許
日本小動物歯科研究会レベル4認定
ISVPS 小動物歯科・口腔外科学認定医(General Practitioner Certification in Small Animal Dentistry and Oral Surgery)
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本症例の記録

種類 ジャック・ラッセル・テリア
性別 メス
年齢 6か月
体重 4.5kg
病名 左上顎犬歯近心傾斜 : 槍状歯
処置 ブラケットとエラスティックチェーンを用いた矯正

犬でもかみ合わせ、歯並びの異常というのがあります。

小さな異常であれば問題が出ないことが多いですが、犬歯の不正咬合は大きな問題につながります。

この子は左上の犬歯が寝て生えてしまい、本来なら下の犬歯の後ろ側に来るのが前側に来てしまっていました。

ちなみに反対の犬歯も同様に前方に出ていましたが左よりは軽度でした。それでも下の犬歯にあたってしまっています。

正常な咬合は下の写真のように前から①上の3番目の前歯、②下の犬歯、③上の犬歯の順番となります。

このような不正咬合には主に3つの問題が起きる可能性があります。

一つは切歯(前歯)と隣あって並んでしまうことによって汚れがたまりやすく歯周病になるリスクが高まることです。

二つ目は斜めに生えると半分歯茎に埋もれた状態になります。埋もれているとポケットが深くなる問題が出ます。歯周病になりやすく、またなるとすぐに深い病的ポケットになることが問題になります。

三つ目は下の犬歯と側面で強く接触するため歯が摩耗する問題です。

もちろん、本人はもしかしたら違和感があるかもしれませんし遊ぶときにものがつかみにくこともあるかもしれません。

この子は現状の把握と避妊手術の実施、乳歯の抜歯そして矯正処置をするかどうかを考える時間のために一度麻酔をかけてます。

その後オーナーさんと相談して矯正治療をすることになりました。

矯正治療第一回目のときの状態です。永久歯がやや萌出してきていますが、咬合は反対のままです。

目標はこの状態から上の犬歯を後ろに傾斜移動させて下の犬歯の後ろ側に持っていくことです。そのために後ろに引っ張る矯正力をかけるためにこの場合はゴムをかけて引っ張る矯正を行います。

犬歯と後ろの大きな歯にブラケットというゴムをかけるパーツをつけてそこにゴムをかけるだけです。

*この写真には間違いが含まれています。(これを見た獣医さんはマネしないでくださいね)

歯が動いてくるとゴムの張力がなくなるので時々付け替える必要があります。

後ろの歯に金属があるのは後ろの歯も前に移動する力が働くのでそれをできるだけ抑えるために2本の歯を連結しているからです。

途中一度ブラケットが壊れてしまったので麻酔をかけて付け直しています。この子はジャックラッセルテリアでなんでも咬む子でした。おそらく、何かをかんだ時に強い力がかかって壊れたのだと思います。同じものを使っても壊れるので金属製のブラケットに変更しました。

このように、矯正治療では移動の方向であったりゴムが外れたりとイレギュラーが起きることがあるためこまめにチェックが必要です。

1か月と10日ほどでここまで移動しました。

犬歯同士が少し離れているように見えますよね。でもこれで大丈夫です。矯正で動かした歯は、今までかけていた力を抜くと少し戻るんです。

上の写真から一か月の状態がこれです。

不思議と本来の位置にきれいに収まってくれるんです。

反対のかみ合わせに関しては何もしていませんが

下の犬歯の傾斜にあたることで後ろに移動する力が自然にかかり正しい位置に移動しています。

本当に体はうまいことできていると感じます。

今回のように矯正治療を行うためにはいくつかのハードル(適応条件)があります。したがってすべての子に実施できるわけではありませんが、もし歯並びが悪いと感じた場合は早めにご相談ください。

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